東京地方裁判所 平成3年(ケ)2148号
物件明細書
東京地方裁判所民事第二一部
平成三年(ケ)第二一四八号
平成四年四月二二日作成
1 不動産の表示
別紙物件目録記載のとおり(省略)
2 不動産に係る権利の取得及び仮処分の執行で売却によりその効力を失わないもの
物件(1)につき
賃借権(短期)
範囲 全部
賃借人 中島敏治
期限 平成五年一月一三日
借賃 月額一一万五〇〇〇円
借賃前払 なし
敷金 二三万円
特約 なし
期限後の更新は、買受人に対抗できない。
物件(2)につき
なし
3 売却により設定されたものとみなされる地上権の概要
物件(1)(2)とも
なし
4 備考
物件(1)につき
ア 管理費の滞納あり
イ 賃料債権の譲渡について
第二項記載の賃借人に対する将来の賃料債権(平成六年八月分まで)が岩澤正良に譲渡されている。しかし、買受人が代金を納付して所有権を取得した以後の賃料債権は、買受人が取得し、賃料債権譲受人である岩澤が取得することはできない。そして買受人は、所有権移転登記以後は賃借人に対しても、登記の日以降に発生する賃料債権につき、その支払を請求することができる。
その理由は次のとおりである。
賃料債権は賃貸人の地位から発生し、賃貸人の地位は目的物の所有権に伴うものである。ゆえに、賃貸人であった者も所有権を失うと、それに伴って賃貸人の地位を失い、それ以後の賃料債権を取得することができない。
そして、将来発生する賃料債権の譲渡は、譲渡の対象となった賃料債権を譲渡人が将来取得することを前提としてなされるものである。したがって、賃料債権の譲渡人がその譲渡後に目的物の所有権を失うと、譲渡人はそれ以後の賃料債権を取得できないため、その譲渡は効力を生じないこととなる。
このことは競売においても全く同様である。競売により所有権が買受人に移転すると、それに伴って賃貸人の地位も当然に買受人に移転し、賃料債権の譲渡人(すなわち現在の所有者)は賃貸人の地位を失うから、それ以後の賃料債権は買受人に帰属し、賃料債権譲渡人には帰属しない。よって、その譲渡は無効である。
買受人はこうして、賃貸人の地位を取得するが、それを賃借人に対抗するためには、所有権移転登記を要し、かつそれで足りる。したがって、その登記以後に発生する賃料については、これを賃借人に請求できることはいうまでもない。
買受人が(代金を納付することにより)所有権を取得してから所有権移転登記がなされるまでの期間に対応する賃料については、賃借人は、その真の権利者は買受人であるとして岩澤への支払を拒み、買受人に支払うこともできるが、買受人が対抗要件(登記)を備えていないことを理由として買受人への支払を拒み、岩澤に支払うことも可能である。買受人は対抗要件(登記)を備えていない以上、賃借人に対してその支払を強制することはできないのである。ただし、岩澤がその支払を受けたときは、買受人は岩澤に対してはその返還を求めることができる。なぜなら、買受人と岩澤との関係においては、その期間の賃料を取得する権利を有するのは買受人であって、岩澤にはこれを取得する権利がないからである。
物件(2)につき
株式会社ナガイエンタープライズが賃借権を主張するが、差押時における占有は認められず、かつ正常なものとは認めない。
(裁判官 村上正敏)